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伊藤計劃記録 はてな版

『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』の劇場アニメ化を記念して、伊藤計劃氏の生前のブログから精選記事を抜粋公開します。

最終戦争

ゴジラ/ファイナルウォーズ 

 これは凄い。まさにファイナルウォーズだ。なぜファイナルかというと、それはゴジラのファイナルであるだけでなく、人類のファイナルだからだ。

 開巻、いきなり人類は滅亡寸前であることが描かれる。54年のゴジラ上陸以来、世界各地にゴジラは上陸し、凄まじい放射火炎によって世界中の都市という都市、文明という文明を破壊し尽くし、半世紀を経て東京を除く全世界が焦土と化した経緯が描かれる。ボンが、パリが、ニューヨークがモスクワが、地表に穿たれた巨大なクレーターの底に叩き込まれ、空は放射能の暗雲に覆い尽くされている。ここまででまだメイン・タイトルもはじまってないのだ。サミュエル・フラーの「最前線物語」かこれは、というくらい物語る経済効率の高さに、完全に圧倒される。「A Ryuhei Kitamura Film」というクレジットとともに、カイル・クーパーによるオープニングクレジットが流れるが、そこにカイルのグラフィカルなテクニックはない。今回、カイル・クーパーはゴジラという「魔物」の前にかしずくことを、積極的に選択した。そのオープニング・クレジットは人類がこれまで行ってきた様々な戦争のフッテージで構成され、その上にゴジラという「魔」が君臨するという重苦しいもので、流れる伊福部テーマは人類への弔鐘のように陰鬱だ。

 そして1999年、というテロップ。武装要塞都市と化した東京の異様な景観が見事な空撮で描写される。ゴジラ上陸から実に45年後。ノストラダムスの予言は思いもよらない形で間近に迫りつつある。ユーラシアもオーストラリアもアメリカも海の底に沈むか草一本生えない被曝地帯と化すかして、もはや残された文明は日本列島の一部。関東圏だけだ。この資源の乏しい島国で人類最後の抵抗勢力が反撃戦力を維持すべく、焦土と化した南米やオーストラリアに渡り、鉱物などの資源調達やわずかな生存人類の「救出」を行っているが、アンギラスやラドンなど世界中を己がものにした怪獣たちによって阻まれ、その生還率は限り無く低い。

 主人公はそんな「資源調達師団」の隊員。TOKIOの松岡演じる彼は指令部からインドの奥地に残った鉱山跡に赴くよう命じられる。そこに何があるかは、同行する情報部の要員・明石大佐だけが知っている。焦土と化したインドに上陸した彼らを襲う怪獣の群れ。部隊の人間が次々に命を落していく中、彼らはようやく目的地に辿り着く。そこはかつてインド政府が核開発のために掘っていたウラン鉱脈だった。

 日本政府──この地上でもはや唯一の政府である日本政府、は決断を下したのだ・・・核兵器によってゴジラを殲滅する以外方法はない、と。情報部は5年前、焦土と化した北米に上陸し、リバモア研究所の廃墟から核兵器の設計図を入手していたのだ。その任務ではほとんどの隊員が怪獣との戦闘で死ぬか、命綱の防護服を損傷し、激烈に被爆して苦しみながら死んでいった。しかい、生き残って帰ったただひとりの隊員が、バンカーバスターと核弾頭の設計図を持ち帰ったのだ。バンカーバスターによってゴジラの体表を突破し、内部で核分裂を炸裂させる。それが、この地上で最後に残った人類の軍隊の、最後の望みだった。

 核はかつてゴジラを生み出した。それなのにそんな兵器が生み出した息子を殺せるわけがない、効果はないかもしれない、と主人公は明石に問うが、しかし米・ソ連のいかなる通常兵器によっても殺せなかったこの怪獣を、他のどんな兵器で殺したらいいのか、と明石は言う。

 結局、その放射性物質は主人公らによって東京へと持ち帰られる。武装要塞都市東京の中心で・・・かつて人類同胞によって被爆し、軍事力を永遠に封印すると誓ったはずのこの国で、核兵器の製造が開始される。折しも、大平洋の外周を警戒していた艦隊からゴジラ発見、進路は東京、との報告が入る。ゴジラとの艦隊戦。核兵器完成までの時間を稼ぐため、艦隊指令は苦渋の決断を下す。彼我戦力差という言葉も滑稽な「神」と「ヒト」との戦い。放射火炎の滑らかなストロークが空母のブリッジを竹のように切断する。デッキのクルーや航空機が吹き飛ぶ。生存艦から砲が斉射されるが、効果はない。

 沈み行く大形空母。まるで艦隊の墓標のごとく、ゴジラが背後にした海面に太い煙が幾筋もたちのぼる。生存者はゼロ。脱出し水面に漂うクルーをラドンが食糧にする。しかしゴジラはその光景を一顧だにせず、ゆっくりと東京へ歩みを進める。

 そんな中、主人公はかつてゴジラを滅ぼした唯一の化学物質の噂を聴く。オキシジェン・デストロイヤー。その名前は武装要塞都市東京の住人の間では有名な都市伝説だった。ゴジラを倒したい、ゴジラから解放されたいという願望が生み出した存在しないマクガフィン。情報部の明石にその存在の可能性を問いただすと、情報部はあらゆる可能性を追求し、オキシジェン実在の調査も実際に行われたという。結果的にその存在は否定され、今回の核兵器によるゴジラ殲滅の決断が唯一の希望だとして残ったのだと。

 果たして人類は滅亡するのか。核攻撃のスポットは東京湾内。決行の暁に東京湾のド真ん中に立ち上るキノコ雲は、果たしてゴジラ、人類、どちらの弔鐘なのか。ゴジラと人類の最終決戦が迫る・・・。


 という夢を観ました。たぶん高橋洋「映画の魔」の影響です。

 映画のほうは・・・怖くてまだ観ていません。

2004年12月04日 伊藤計劃

引用:http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/200412