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伊藤計劃記録 はてな版

『虐殺器官』『ハーモニー』『屍者の帝国』の劇場アニメ化を記念して、伊藤計劃氏の生前のブログから精選記事を抜粋公開します。

ぼくとあなたはちがうということ

自腹は神様ではない なんだか、ひさしぶりに道徳的な話を書きたくなってしまったので、ウザいと思う人はパスしてください。しかも、これから書く「道徳」は、かなりものを観るうえで初歩的な、小学生レベルの心構えなので、普通の人は読まなくていいです ま…

いずこの地で

さすらいびととして死ぬこと 追放/亡命とは、もっとも悲痛な運命のひとつである。近代以前の時代において追放がとりわけいまわしい刑罰であったのは、それがただ家族や住みなれた場所を離れ、何年もあてもなく放浪することを意味しただけでなく、一種の呪わ…

白紙のスクリーン

歩くぞ、これ。 というわけで、GDHの行く末を見定めるというただそれだけのために「銀色の髪のアギト」を見てきた俺が来ましたよ。 アニメ映画、というのは「すべてがデザインされた映画」だからして、この「アニメ」映画に何が欠けているかというと、デザイ…

いくさの王

「個性」を大切にしよう、と教育は語る。その子の、その子だけが持っている才能を伸ばすような教育こそ大切です、と。現代は個性の時代だ。あなたと、わたしが、ある点で異なっていること。その異なり方によって優劣が付くこと。 その「個性」が人を殺す道具…

シュールだ

バラードじみたからっぽの空間としての 窓の外に、広がる田園。森が広がり、周囲に建物が見当たらない。 見知らぬ天井。 どこだここは。 今日まで、自分がどこの病院に収容されたか、知らなかったのだ。 大量の止血剤をぶち込んだおかげで、出血は止まり、痛…

これにて閉廷

ディストピア10傑(続き) というわけで、イギリス産ディストピアをひとしきりみたあとは、アメリカ産を見ることにする。 イギリス産とアメリカ産のちがいというのはあるのだろうか。うーん、あくまで感触だけれども、イギリスやヨーロッパのディストピアは…

プロジェクト・メイヘム

ディストピア10傑 世界ではみなさんがなんだか面白そうなことやっていたみたいなのだが、すっかりお祭りに乗り遅れてしまった。締め切りがちょうど17日で、その前3日はフルに完徹。そんなてんぱった俺サマーに何が出来ようか。完全に乗り遅れだ。 乗り遅れる…

政治の行われる場所

標的は11人:モサド暗殺チームの記録 目録にあったので問い合わせていた「パルチザンの理論」は既に売れてしまっていた。ので、入手できたのは赤瀬川原平さんの「ぱくぱく辞典」と、恐らくスピの映画公開のあかつきには再版がかかるだろう「ミュンヘン」原作…

流通する言葉

戦争広告代理店~わるもののつくりかた 文庫落ちしたいまごろ読みました。遅すぎ。 実は、この題名自体、ある種の自己言及になっていることは、だれも書いてないみたい。本当にセルビア側は虐殺をやらかしたの?そもそも「被害者」ボスニア・ヘルツェゴビナ…

腐ってもマンシーナ

喫煙、アディクト、オタク いまや記号としてのジョン・ウェインがいかなる存在としてあり続けているかは、誰の目にも明らかだろう。素手をだらりとたらしたままスクリーンに登場することのないこの接触の魔は、たえず掌で何かに触っていなければ居心地が悪く…

たまにはカタい話でも

むかしむかし、夢見られたせかいのはなし ユリイカ 2005年10月号 特集 攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX を買い、仕事場から夕食に出たときラーメン屋さんで読んでしまった。面白かったわけではない。制作サイド自身の発言は(予想通り)おおむね面白かったけ…

おもしろい顔の人

ヒトラー 最後の12日間 とにかくゲッベルスが立ちすぎ。顔とか顔とか顔とか。本物のゲッベルスの写真はふつうに整った顔で、こんなに異様ではない。見ているあいだこの役者なんなんだ、と思いながらずっと楽しかった。「マインフューラーがね、マインフュー…

ほんの話

オタとしてのスピルバーグ 実は、このオッサンが怪獣映画に興味があるなどとは、考えたことがなかったのだ。そりゃ、ゴジラぐらいは見ているだろうけど、この人の映画って「サブカルっぽいものへの愛着」を感じたことがなかったんですわ。 この人がWWIIヲタ…

ヒストリー・オブ・バイオレンス

宇宙戦争 「ははは、人がゴミのようだ!」――天空の城ラピュタ 要するに、たかがキャッチボールをこれだけ暴力的に演出できる男の才能とは一体なんなのか、ということだ。「見せること」がまさか暴力になるとは思っていないルーカスなどとは、演出の地力がケ…

万国の労働者よ、ゴッサムに集結せよ

バットマン・ビギンズ ブルース・ウェインがバットスーツのアーキタイプを「俺色に染まれ」とスプレーで黒く塗装するとき、その光景はまるでガレキやプラモを塗装する風景にしか見えず、そのマニュファクチュアの生々しさが生じせしめる卑近さは、しかしスパ…

ドツボ

夏 受かった。いままでずっと駄目だったのに。しかしこの歳で受かるのもかなり恥ずかしいものがある。じゃあそもそも申し込むなという話になるわけだが。ただいままで落選しすぎていたので、受かる気がまったくしなかったから気楽に申し込んだという言い訳は…

アイ・ラブ・オーリー・ザ・ホロウ

キングダム・オブ・ヘブン 幸福なるかな、憐憫ある者。その人は憐憫を得ん。幸福なるかな、心の清き者。その人は神を見ん。幸福なるかな、平和ならしむる者。その人は神の子と稱へられん。幸福なるかな、義のために責められたる者。天の御國はその人のものな…

彼岸アニメ

劇場版ワンピース~オマツリ男爵と秘密の島 「なんかこれ、すげー怖いんだけど」 と隣の席の少年は言った。それは具体的には劇中のある箇所の描写に関してなんだが、そこ以外でも劇場は後半、分厚い沈黙に包まれ、子供達は押し黙っていた。退屈していたのな…

199X年・・・人類は絶滅していなかった

数年前から、ずっと妄想してきたことがある。いま、核を扱う物語とはどのようになるのだろうか、と。核爆発によってニューヨークが、ロサンゼルスが壊滅し、ウン10万、ウン100万の人が死ぬ。それを防ぐために主人公たちが駆け回り、テロリストは政治的目標や…

よき商売は、つねにそこにある

「戦争請負会社」P.W.シンガー、NHK出版 Take a close look at the track record of this company, and you'll see that we've gambled in markets traditionally regarded as non-profit--hospitals, prisons, space exploration. I say "good business is …

明日の世界

よい年を探して 年末は鹿島神宮へ初詣に行く。男だけで。年始は松本の方の温泉に行く。男だけで。 絶望は深い。 といいつつ、自分が本気で誰かに愛されるための正当なコストを支払っているかと言うとそうではなく、私の給料の大半は映画とDVDと書籍に消えて…

「じゃあ、逝くわ」

今年観た映画の記憶 物凄い勢いで忘れている。自分が今年、何を観たのか。そんなに数を観ているわけではない。月にせいぜい5、6本がいいところ。それなのに思い出せない映画がたくさんある。悲しいことだ。 1:「ヴィタール」 「バレット・バレエ」から塚本晋…

ポテチとクリスマス

台風一過 クリスマスの夜、俺は何をしていたか。ポテチを食っていた。一言で言えば、そうなる。というかそれ以上表現しようがない。ポテチを喰っていた。この単純な叙事的記述が祇園精舎の鐘の音のような虚しさを漂わせる日というのは、1年のあいだにもそう…

「ここ」から出られない

ヴィタール 9日木曜日、半年に一度のオラクルをききにいった。こればっかりは慣れないものだ。転位ということばが頭からはなれないまま、GE製のCTのSFっぽいリングに、体を輪切りにされてくる。 そんな週が「ヴィタール」の公開週だというのはたちの悪い冗談…

音色からぼくは逃れられない

観てきたよ いや、昨日の日記は別にほんとうにああいう夢を観ただけなので、北村ゴジラに対する悪意とかそういうもんではないわけです。大体あの時点で観てない映画に嫌みも何もありゃしません。 というわけで、意を決して観てきましたよゴジラ。ゴジラ FINA…

最終戦争

ゴジラ/ファイナルウォーズ これは凄い。まさにファイナルウォーズだ。なぜファイナルかというと、それはゴジラのファイナルであるだけでなく、人類のファイナルだからだ。 開巻、いきなり人類は滅亡寸前であることが描かれる。54年のゴジラ上陸以来、世界…

もののけ姫

もののけ姫 DVDは持っているのだけれど、前述の理由で会社から出る2300時までだらだらと観ていた。 宮崎作品でこれがいちばん好きだ。傑作だと思う。 「トトロ」はあまり好きではない。というか嫌いだ。ああいう風景は小岩で生まれて江戸川を眺めて育ち、千…

The Prince of Darkness

「恐怖の詩学/ジョン・カーペンター~人間は悪魔にも聖人にもなるんだ」 ヒーローというのは、目的がひとつしかない人物のことだ。 とカーペンターは語る。「そのただひとつの目的がなんであるか、その目的が邪悪であるか軽薄であるかポジティヴであるかに…

クリスマスと死

誰にでもやってくるらしいぞ さて、今日は買い忘れていたアメコミを買いに行こうと思い、15時頃家を出て、駅のケンタッキーで遅い昼飯のチキンフィレサンドセットを喰っていたら、こういう曲が聴こえてきた。 クリスマスは誰にでもやってくる~♪ 初耳だ。少…

キャシャーンがやっちゃったので俺はどうすれば

「CASSHERN」ってなんだったのだろう 自分が劇場で観たものはいったいなんだったのか。恐ろしく下手っぴいな映画を観た気もするし、恐ろしく愚直で正しい映画を観た気もする。よく憶えていない、というのが正直なところだけど、それを確認するためにもう一度…

トニー・スコット、イーストウッド

妥協は朝飯前 相変わらずあたまぐらぐらなのだけど、仕事があるので会社に出てきた。帰りにInvitationの10月号を買ったのだけど、表紙が「雲の向こう、約束の場所」だったので驚いた。見ればアニメ特集。目次を見れば、contributorsのところに中森明夫とかと…

国家、サイバーパンク、攻殻

攻殻2nd かつて、サイバーパンク華やかなりし頃、そこに「国家」なるものはえらく希薄だった。それが80年代の気分、というやつだったのだろう。ハイテクノロジーを生み出す能力を持った多国籍企業が階層の上部にあり、ネットワークが国家の境界を消失させて…

申し訳なさ顔の王

「すまない」という言葉を呑み込み続ける王の物語 というわけで、「マッハ!!!!!!!!」の試写のあと、ビッグサイト夏の陣の準備というオタクの修羅場に突入していたので、二週間も映画館に行ってなかったのだった。原稿そのものは終わったんだけど、終わったら…

レーガン、パトレイバー、攻殻、80年代

本日の収穫 ・アームズマガジン で銃について押井インタビューが6ページと意外なボリューム。押井特集で藤木さんもプロテクトギアのモデルで登場(イノセンスのプロモでバトーの中に入っていたとゆーのは本当でせうか)。 まあ、「外部にある身体としての銃…

And all that could have been.

アキバに行って、ラジオ会館の輸入DVD屋Saleに行き、押井がコメンタリーを新録したというUS盤の「ビューティフル・ドリーマー」を予約する。それから、いろいろと物色したあと、となりの御茶ノ水に行き、洋麺屋でたらこカルボナーラを食べる。 そして聖橋を…

錠剤食糧とるの忘れたわ

イリイチ連続体 そんなある日、ボーリナスの郊外で、ミンの好戦建築の中でもとりわけ贅沢なものを撮ろうと支度しているとき、ぼくは薄い膜を突き破ってしまった。蓋然性という膜を── このうえなくゆるやかに、ぼくは“一線”を超え── 見上げたとき目にはいった…

同人誌としての「パッション」

いわゆるSS といってもナチの突撃隊ではなく、ショートストーリー。ゲームやアニメのファンの方々が書く、二次創作の同人小説ってやつですな。好きなアニメやゲームのキャラを使ったオリジナルストーリーや、本編の全後日談。 で、メルギブの「パッション…

サイボーグな俺

ギアが壊れた 「最高度のメンテナンスなしには生存できなくなったとしても、文句を言う筋合いじゃないわ」 とサイボーグなメイジャー草薙素子様はボートの上でおっしゃられておりましたが、私の足首を固定するギアが壊れました。 柔軟性に富むプラスティック…

スポーツハスミン

『スポーツ批評宣言あるいは運動の擁護』 蓮實重彦曰く、 草野球は醜い。 さらには その凡庸さはほとんど井ノ頭線の域に達している。 本屋でたまたま開いたページがここだったので、即買い(ISBN: 479176109X)。 というわけで、元総長の暴走ぶりはとどまる…

映画のかたち

キャシャーン 前日であんなこと書いておいて、舌の根も乾かぬうちに、今日夜なんか書こうかしら、と。 というわけで こちらには「キネマトリクス」のフォーマットには入らなかったりする、だらだらした感じの文章を書きつけていこうと思っております。気合い…

というわけで

はてなを導入してみる。 日記、というものからぼくはいかにも縁の遠い人生だった。3年前に癌を患って、あんたいちおー死ぬかもしれんよ、わたしが助けるからんなこたならないけどね、と恩人である先生に言われたときは、自分が結婚もしておらず子供もなく、…